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モッチョム岳の雄姿 標高944m
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屋久島は、日本ではじめて世界自然遺産の登録(1993年)を受けたところである。この島の原生林を一度この目で確かめておきたかった。
島に渡った初日は、観光バスで施設巡りをした。【(1)志戸子ガジュマル園、(2)屋久島環境文化センター、(3)屋久島有用植物園、(4)ヤクスギランド】

パイナップル園から屋久島モッチョム岳を望む |
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スターアップル |
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パパイヤ |

グアバ |
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アロエの花畑 |
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紀元杉 樹齢3,000年 樹高19.5m 胸高周囲8.1m |

モッチョム岳の不思議な山並み (佛陀の姿か)
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2日目は、一人でトレッキングを試みた。70歳の老人には、黒味岳(標高1,831m)登山は少し酷であらうと、初心者向きの「白谷雲水峡」に行くこととした。
昨夜は雨が降っていたようだった。幸い朝には雨も上り天気は回復しそうである。尾之間のホテルからバスで宮之浦港に行き、そこからタクシーで白谷峡谷に向った。白谷峡谷に近づくにしたがって濃霧が辺りを覆いつくしてくる。山に入るとやっぱり雨だった。林芙美子の小説の一節(浮雲)を思い出した。“ひと月に35日雨が降る”。その様子が理解できた。早速雨合羽を取り出し、スパッチで足元を固め山に向った。“暑っ苦しい!”少し歩き出すと雨は上ってくれた。

花崗岩の岩場を登って行く
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渓谷に沿って、白たえの滝、飛流おとし、苔河原など渓谷美に見とれながら登って行った。自然林に入ると、木に結んだ赤いリボンが頼りである。やがて、二代大杉(切り株に実生で育った杉の木?)、三本足杉(切り株に生えた杉の木が、古い切り株が朽ちてなくなり根上りになったもの)びびんご杉、三本槍杉(傾いた杉の木の枝が成長し、三本の親杉になったもの)、奉行杉(樹高24m、胸高周囲8.5m―標高820m地点)、二代くぐり杉、この地点までくると登山者の人影はなくなった。“もののけ姫”でも出て来そうな神秘的な雰囲気である。この地点が一般登山者の頂点で、これから先は一寸無理と思った。この先900mぐらい登ると太鼓岩などの見晴し台があるようだ。やっぱり諦めることとし、反対側のルートを降りていった。出発点から、吊橋まで歩いた距離はパンフレットで見ると3,400mであった。

奉行杉 樹高24m 胸高周囲8.5m |
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屋久杉の切株 |
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三本足杉 樹高24.2m 胸高周囲2.7m |

樹根がからみ合う原生林 |
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三本槍の杉 |
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樹魂(不思議な樹根=人面) |

弥生杉 樹高26.1m 胸高周囲8.1m 樹齢3,000年
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吊橋地点から、弥生杉のコースに入った。弥生杉(樹高26.1m、胸高周囲8.1m、樹齢3000年―標高710m地点)、樹幹が隆々と盛り上り、杉の木とは思えない風ぼう(樹姿)である。人間の世界でいえば“仙人”の風ぼう―霊感さえ感ずるのである。弥生杉コースは、総延長1,100mであった。
登山口の案内所から歩き出して、原生林コース、弥生杉コースと、その間様々な景観をカメラに納めようとずい分上ったり下がったりした。実際に歩いた距離は4,500mをはるかに上回っているではと思った。
屋久杉とは、樹齢1,000年以上のものをいうらしい。それまでの杉の木は、全く普通の杉と変ることはない。―1,000年を越える頃から樹脂を蓄積し、幹に瘤(こぶ)ができ表面が隆々と盛り上ってくる。これは屋久島という気象条件がもたらす格好の生育環境からかもしれない。周囲わずか105kmの小さな島、そして、急峻な山が海岸近くまで迫り出している。この小さな島の中には標高1,500m以上の山が15岳(1,000m以上では31岳)もある。
この急峻な山膚を太平洋の湿った温かい大気が駆け昇り、そして急速に冷やされ雨粒を形成して行くのである。
年間雨量1万mmを超すというから想像に絶するものである。全く、バケツをひっくり返したような雨―ラッキョウ粒のような雨が降るそうである(雨量の最高記録、昭和37年6月、降りはじめからの雨量597mmの記録がある)。

ヘゴの木(シダ類)
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屋久島には、屋久杉ばかりではない。屋久島だけにある植物が400種―熱帯から亜熱帯、温帯、寒帯までの幅広い植物分布が見られるようである。
屋久島での滞在は、3日間弱であったので屋久島の全体を見たわけでもない。しかし、見るかぎりにおいて屋久杉が以外に少ないことに驚いた。そして、山中にはたくさんの切り株の跡が見られる。中には、“試し伐(ぎ)り”といって切り倒して見て、材質の悪いものはそのまま山中に捨ててしまったものなどが見られる。乱伐そのものであると思った。そして、伐採した後のホロ(植林などの手当)がなされていないとも思った。私は、山の専門家でもなんでもないが、杉の木は群生して育つものと思っている。このように森相に風穴をあけてしまうと、周囲の木は生育環境を損い、風害、雷害を受けてしまうのである。今回見た屋久杉のほとんどが風害で枝が傷み、雷害で上部が枯死している姿であった。
世界遺産と指定された島の奥西部地域(今回行かなかった)では、このような状況ではないことを願っている。
次の日は、千尋滝(せんぴろのたき)を見学し、屋久島を後にした。

千尋の滝の側壁 花崗岩の一枚岩 |
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千尋の滝 上段20m下段60m |
2001年12月 長岡 榮 記
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