こんな場合、あなたならどうしますか?

建設工事現場に対するいやがらせ妨害行為

暴力団が関係していると噂のある会社から、建設工事で使用する資材の納入申込みがあったが、それを断ったところ、建設工事現場入口に毎日のように暴力団風の男数名がたむろし、建設工事現場に出入りする車両や工事関係者などに何かといやがらせをするようになり困っている。
これを中止させるには、どうしたらよいだろうか?


1.不当な威圧や揺さぶりに毅然とした対応を
建設工事現場では様々な資材や物品が必要であるところから、そこに目を付けた暴力団やその関係会社(通常、これをフロント企業と呼んでいます。)が、資材や物品の購入方を要求してくることがよくあります。
そのような場合、これまでも再三記述していますように、一番大事なことは、どんなことがあっても、彼らの要求に応じてはならないということです。それが暴力団対応策の基本原則の一つです。
一度、彼らの要求を呑みかかわり合いができると、彼らはそれを突破口として、次々と不当な要求を繰り返して来ます。気が付いた時には既に手遅れとなってしまう事態もよくあることです。
ただ、設問のように、彼らは一度要求を断られたからと言って、そのまま引き退がるようなことはまずありません。要求を実現するために、暴力団として長年培ってきた色々なテクニックを使って、威圧や揺さぶりをかけてくることを常套手段としており、現実に、設問のような行為に出てくることは十分あり得る話です。
しかし、そこで肝要なことは、そうした彼らの威圧や揺さぶりに決して屈服してはならないということです。
このような時にこそ、会社のトップをはじめ全社員が一体となって、一大勇猛心を奮い立たせて、彼らと対決する気構えを持って臨むことがなによりも必要なことです。


2.相手のいやがらせや妨害行為の実態把握
設問のようないやがらせや妨害行為が行われる場合には、必ずその行為の実態を把握し、それを記録として証拠化しておくことが必要です。
その場合、特に実行行為者及びその実行行為の指示者をできるだけ特定し、彼らと暴力団との関係を明らかにすることが必要です。また、いやがらせや妨害行為の日時、その他行為の実態を、場合によっては写真やビデオを併用しながら正確かつできるだけ詳細に記録しておくことが必要です。
特に、建設工事現場へ出入りする上で、具体的にどのような支障や影響が出ているのか。建設工事現場への出入りが物理的に阻害されているような状況があるのか。服装や態度で心理的に威圧を受けている程度なのか、単なる不快の念を生ずる程度なのか。そうしたことが実態把握のポイントとなります。
また、こうした実態把握活動と同時に、相手方によるいやがらせや妨害行為について、速やかに所轄の警察署に通報し、警察としての対応を求めることも緊要なことです。


3.警告文書による警告措置
設問のようないやがらせや妨害行為は、現実には、警察に通報し警察措置を求めることによって、そうした行為を排除できる場合が多いと認められます。
しかし、それでもなお、そうしたいやがらせ妨害行為が続くような場合には、そうしたいやがらせ妨害行為を使そうしている者、及びいやがらせ妨害行為の実行行為者に対して、「即時妨害行為を中止すること、中止しない場合は民事、刑事上の責任を追及する」こと等を内容とする内容証明郵便等で警告書を送付し、断固とした会社の意思を表示することが必要です。


4.公安委員会による中止命令措置
相手方の実態調査をした結果、それがいわゆる指定暴力団であった場合には、設問のようないやがらせ妨害行為は、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)第9条第1項第3号で禁止されている、「請負、委任又は委託の契約に係る役務の提供の業務の発注者又は受注者に対し、その者が拒絶しているにもかかわらず、当該業務の全部若しくは一部の受注又は当該業務に関連する資材その他の物品納入若しくは役務の提供の受入れを要求すること」に当たるものと認められます。
なんとなれば、資材納入申込みを断ったにもかかわらず、いやがらせや妨害行為を継続しているということは、明らかに資材納入を暗々裡に要求していると認められるからです。
従って、警察に相談し公安委員会から当該行為の中止命令を発出して貰い、以後、暴対法に基づく必要な措置を講じて貰うことが最適と考えられます。


5.仮処分及び訴訟手続
相手方が指定暴力団員でもなく、また、3項に記述した警告措置をとったにもかかわらず、なおいやがらせ妨害行為が続くような場合には、建設工事現場入口付近にたむろすること自体の不作為を求める仮処分の申立を行ない、妨害行為を排除する必要が出てきます。
裁判所に対する仮処分の申立ては、相手方を特定し、いやがらせ妨害行為の内容を明らかにして行う必要があります。
ここにおいて、2項で記述した実態把握活動が生きてくることになりますが、具体的な仮処分の申立てについては、弁護士に相談されるとよいと思います。
さらに、建設工事現場のいやがらせ妨害行為の禁止を求める訴訟(仮処分がなされていればその本案訴訟となります)及び相手方の妨害行為によって損害を蒙る可能性がある場合には、妨害行為の実行行為者及びその使そう者に対する損害賠償請求訴訟を行うことも検討されるべきものと考えますが、そうした民事手続には専門的知識が必要ですので、これらについても弁護士とよく相談の上で手続を進める必要があると思います。


6.刑事事件としての告訴
相手方のいやがらせ妨害行為が、刑法に定める威力業務妨害罪その他の刑罰法令に触れると認められる場合には、後難を怖れず、相手方を刑事事件被疑者として告訴し、捜査権の発動を求めることも事態を解決する有効な方法であります。


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