こんな場合、あなたならどうしますか?

愛人関係をバラスと金を要求

妻子を持つ身でありながら、ある女性と2年程前から愛人関係となった。
そのことがどうして暴力団員にバレタのか合点が行かないが、先日ある暴力団の組員と名乗る男が会社に来て、「女性との関係を公表されたくなければ500万円を出せ。」と要求され、どうしたらよいか心底困っている。


1.この種の要求に対しては、「最初から絶対に応じてはならない。」というのが原則。
女性関係に限らず、人の弱みにつけ込んで、金をゆすり取るというのが暴力団員の最も通俗的な金儲け手段となっており、彼らはこうした情報の入手に血眼になっています。
それはとも角として、設問のような要求に対しては、何はともあれ、最初から断固として、そうした要求をはねつけることが肝心です。
そうした事実を妻子に知られたくないとか、保身や世間体を考えるのは人情ではありますが、”金で済むことであれば”と安易にお金を渡したことが、結局はその人の命とりになってしまうことは、過去の事例が良く示しています。
たとえ、愛人関係が社会的に批難に値するものであったとしても、内密に済まそうとして金銭を支払えば、かえって取り返しのつかないことになってしまうのです。
彼らは、ひと度金を手にすると、良い鴨が飛び込んできたとばかり、何度でも繰り返し金を要求してきます。その人がどんなに苦しもうが、家庭崩壊につながろうが、決して容赦はいたしません。その人の世間体など一切おかまいなしです。骨の髄までしゃぶるのが暴力団であることを忘れてはなりません。


2.直ちに警察に届出ることが一番肝要
暴力団員が人の秘密をネタとして金を要求する行為は、ほとんどの場合、恐喝罪等の刑事犯罪が成立する可能性があるものと認められます。
ところで、暴力団員はこの種の不法行為を行う場合、”サツに知らせると大変なことになるぞ”等と必ずと言っていいほど、先制パンチを浴びせてきます。そのことはすなわち、暴力団員は警察の存在を怖がっているということの証左に他ならず、表面上で強がりを言う彼らも、警察に検挙されることを一番恐れているということです。
また、これまでの例からすれば、警察に届出されたことが判れば、彼らは、結局手を引くことが多いということのようです。従って、相手が暴力団員であるかどうか判らない場合であっても、また、それが指定暴力団員であるなしにかかわらず、ちゅうちょすることなく警察に届出ることが肝要です。むしろ警察に届出た方が対世間的には秘密が保たれることにつながると思われます。
反対に窮余の一策とばかり、他の暴力団員に仲介を依頼したりすることは、いよいよ彼らの陥穽にはまってしまうことになり、愚策中の愚策であることを心得るべきです。


3.相手が指定暴力団員であれば中止命令、再発防止命令の対象となる。
暴力団員による不当な行為の防止に関する法律(暴対法)第9条第1項第1号は、指定暴力団員が、その暴力団の威力を示して、「人に対し、その人に関する事実を宣伝しないこと、又はその人に関する公知でない事実を公表しないことの代償として、金品その他の財産上の利益の供与を要求すること」を禁止し、公安委員会は、そうした行為に対して中止命令(暴対法第11条第1項)や再発防止命令(暴対法第11条第2項)を発することができることになっています。
設問の事例は、まさに、ここに規定されている”公知でない事実”であって、公表されたくないその人の秘密にあたりますので、相手が指定暴力団員であれば、中止命令や再発命令の対象となるわけです。
ここに規定されているように、相手方が指定暴力団員であるかどうかは、指定暴力団との関係を示すと認められる一切の行為を総合して判断することになります。言葉で「自分は暴力団○○組の者だ」等と指定暴力団の名前を挙げた場合はもちろんのこと、指定暴力団の名入り名刺や代紋を示すことなども含まれます。場合によっては、指定暴力団員であることをほのめかすような言動があった場合も含まれるものと認められます。
さらに、「威力を示す」とは、必ずしも脅迫的な言動や暴力が伴うことは必要ではなく、市民が一般的に困惑するであろうと認められるような状況があれば威力に該当するものと考えられます。
もちろん、指定暴力団員が、これらの中止命令や再発防止命令に違反すれば処罰を受けることになります。
以上の状況ですので、先にも記述しましたように、とに角警察に届出ることが大切なことになります。


4.場合によっては面談禁止等の仮処分を申請する。
相手が指定暴力団員でない場合や、指定暴力団であっても、暴対法に定める中止命令や再発防止命令の要件にあてはまらないような場合で、相手の要求を断ったにもかかわらず、会社や自宅に押しかけたり、しつこく電話をかけてくるような場合には、裁判所に対し、面談禁止等の仮処分を求めることも考えるべきです。
こうした処置をとる場合は、先ずは弁護士に相談するとよいと思います。
但し、面談禁止などの仮処分決定に違反したとしても、そのことだけで刑事処分の対象にはなりませんが、面談禁止等の仮処分決定が出ているのにもかかわらず、さらに相手が不当な要求をしてきたときは、恐喝罪等の刑事犯罪にあたる可能性が高くなりますので、警察に届出るとともに、刑事告訴等の処置も検討すべきであると思います。


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