こんな場合、あなたならどうしますか?

寄付金の要求

ある政治団体の名刺を持った、一見暴力団風の男が突然会社にやって来て、「北方領土返還運動を全国的に展開している。ついてはこの運動を支援してほしい。活動資金として寄付をお願いしたい」と執拗に要求されて困っている。


1.寄付金は暴力団の有力な資金源となっている。
暴力団も最近ではやり方が巧妙になり、政治問題や社会問題を考える政治運動団体や社会運動団体に仮装して、北方領土返還、差別撤廃、麻薬撲滅など反対しづらい運動を名目として、一見もっともらしい規約や設立趣意書などを示して、寄付金や賛助金を集めています。
これら集めた金は、実際には暴力団の活動資金や生活資金となっており、極めて反社会性が強いものです。
うかつに彼等の要求に応ずることは、暴力団を支援することになるばかりでなく、彼等と手が切れなくなり、ずるずると深みにはまってしまう結果ともなりかねません。


2.暴力団の寄付要求には絶対に応じないという会社の幹部やトップの決意が総てを決っする。
最近では、各業界でも「暴力団を恐れない」「暴力団に金を出さない」「暴力団を利用しない」という、いわゆる暴力団追放3ない運動がようやく浸透してきました。また、企業が暴力団に金を渡したり、利益供与をしている事実が表面化し、その企業が強い社会的非難を受け、トップの社会的責任が問われる事態が頻発しています。それだけ社会の暴排気運が盛り上がっているとも言えましょう。
会社の担当者にとっても、会社の幹部やトップの意思が明確になっており、会社としてのバックアップ態勢が確立されておれば、それだけ自信を持って毅然とした態度で相手方に対応できるわけです。


3.言質を与えないよう注意し、はっきりと断る。
こうした事案では、これまでにも記述しておりますように、先ず名刺その他で相手の身元を確認するとともに、あやふやな態度をとらずに、はっきりと断ることが肝要です。
それでもなお退去しない場合は、勇気を持って警察へ届け出て、警察の力を借りることを考えるべきです。
企業の幹部やトップに面会させてはなりません。


4.寄付を断っても、速やかに立ち去らなければ条例違反となる。
押売等の防止に関する条例(島根県条例第16条)第3条第1項1号では、寄付募集を断られた場合は、速やかに立ち去らなければならない旨を規定し、違反すれば罰則が適用されることになっています。
刑法の不退去罪は、成立要件が厳しく、再三退去を要求しても立ち去らず、長時間居座っているような状況がなければ成立しないわけですが、この条例違反は、そうした厳しい要件を必要とせず、寄付募集を断られ、速やかに立ち去らなければ違反となります。
時に応じて、この条例の規定を念頭に置き、警察への通報などの措置を取ることも必要です。
もちろん、寄付金要求の過程で脅迫や恐喝的な言動などがあれば、脅迫罪や恐喝罪などが成立することも考えられますが、それはあくまでもケースバイケースで決ることです。


5.相手が指定暴力団員であれば、暴対法違反となる可能性が高い
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)第9条第1項2号では、指定暴力団員が、指定暴力団の威力を示して、寄付金、賛助金、その他名目のいかんにかかわらず、「みだりに」金品等の贈与を要求することを禁止しています。
この「みだりに」要求することの意味は、「不正にあるいは社会的妥当性を欠く方法」で要求することを意味するとされています。
従って、指定暴力団員が指定暴力団の威力を示して行えば、ほとんどの場合この要件に該当するものと思われます。
また、こうした暴力的要求行為に対しては、その暴力団員に対して、公安委員会は中止命令を出すことができることになっており、さらに、反復して暴力的要求行為を行うおそれがあるときは、再発防止命令を出すこともできることとなっております。
例え、相手が指定暴力団員であるかどうか不明であっても、その身元の確認は警察に依頼することとして、こうした不当な要求があれば、直ちに警察に通報することが肝要です。


6.場合によっては、面談禁止などの仮処分をかける。
不当な要求のために会社や家庭に乗り込んで来る場合には、裁判所に面談禁止や電話をかけてくることなどの禁止の仮処分をかけてもらうこともできます。
これは、通常の民事手続きとなりますので、この方法を取りたい場合は、弁護士に相談するのがよいと思います。


7.平素から担当責任者を決めておく
実際には、設問のような場合に冷静に対応することは、誰にでもできるものではありません。
従って、平素からこうした問題に対処する責任者を複数選任しておくことが必要と考えられます。
選任された責任者は、公安委員会が毎年行っている責任者講習を受け、また、対応要領について常に研修を怠らないようにしておくことが重要です。


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