暴力団ミニ講座

27) 指定暴力団
平成4年3月1日、暴力団に対する規制対策法として、「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」(通称、暴対法、または暴力団対策法)が施行されました。

この暴力団対策法に基づいて、各都道府県公安委員会は、暴力団のうちでも一定の要件を備えた反社会性の強い団体を、この法律の適用を受ける対象団体として指定してこの法律の網をかぶせ、以って必要な規制取締りを加えて行くことができるように定めました。この暴力団対策法に基づいて指定された暴力団が「指定暴力団」といわれるものです。
すなわち、指定暴力団とは、「各々の都道府県公安委員会が、暴力団対策法に基づき、各々の都道府県内に本拠を有する暴力団のうち、暴力団対策法に定めた一定の要件を備えた反社会性の強い団体を暴力団対策法の対象団体として指定した暴力団」のことを指しています。そして、この指定暴力団の構成員を「指定暴力団員」と呼んでいます。

ところで、暴力団対策法に定めている指定暴力団の指定要件とは次の三つとなっています。

その1.暴力団がその暴力団の威力を利用して生計の維持、財産の形成または事業の遂行のための資金かせぎを行いやすくしている団体であること

その2.その暴力団の幹部または所属全暴力団員のうちに、麻薬犯罪や傷害罪などの暴力団特有の犯罪の前科を有するものが一定の割合以上居ること

その3.その暴力団を代表する者またはその運営を支配する地位にある者の統制の下に階層的に構成されている団体であること。

以上のとおりですが、いわゆる広域暴力団については、指定暴力団の連合体として指定することもできるようになっています。

また、都道府県公安委員会の指定手続についても人権に配慮し厳格な手続要件が定められており、先ず指定を行なおうとする場合は、当該暴力団に弁明の機会を与えるために「聴聞(ちょうもん)」を開き、国家公安委員会に対し、指定要件を備えていることについての「確認」を求めることとなっています。
国家公安委員会は、審査専門委員の意見を聞き、当該暴力団が法の定める実体的要件を備えているか否か改めて判断することになっています。
その上で、都道府県公安委員会は指定暴力団として指定し、官報に公示します。
指定の有効期間は公示後3年間となっています。
平成11年8月1日現在の指定暴力団数は、広域暴力団五代目山口組など24団体で全国の暴力団員の約88%が指定暴力団員となっています。

そこで、暴力団対策法についてですが、もともと、暴力団対策法は民事介入暴力事案を抑止し、暴力団の資金源を封圧することを主な目的として制定された法律です。
別項(民事介入暴力)でも説明しましたように、最近の暴力団は、お金や利権にからんだ民事上のトラブルに介入し、不法資金の獲得を策する事案が多くなってきています。
しかも、その手口は極めて巧妙で、なかなか刑事問題としては扱いにくい犯罪スレスレの行為、いわばグレーゾーンの反社会的行為によって目的を達している場合が多く、既存の法律による取締効果は十分なものではありませんでした。
また、そのことが民事介入暴力の増加を招き、暴力団の横暴を許す結果ともなっていました。そこで、暴力団対策法は、彼らの常套手段ともなっている不法行為を15に類型化し、これを「暴力的要求行為」として規定し、指定暴力団員が、指定暴力団の威力を背景としてこの暴力的要求行為を行ったときは、都道府県公安委員会は、その行為に対し、「中止命令」を発出することができることとしました。さらに、この中止命令に違反した場合は罰則をもってのぞむこととし、いわゆるグレーゾーンの反社会的不法行為を規制取締りができるようにしました。

この暴力団対策法の施行後、全国的に各々の公安委員会から、暴力的要求行為に対し、次々と中止命令が発出されてきており、この法律による規制効果が徐々に現われてきています。
ただ、指定暴力団以外の暴力団員はこの暴力団対策法の適用を受けないことや、暴力的要求行為に規定されている15類型の不法行為以外の不法行為については、都道府県公安委員会の中止命令等の措置がとれないことに、若干の問題がなくはありません。


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