暴力団ミニ講座

15) 義理かけ
「義理かけ」というのは、暴力団が行う、襲名披露、結縁、葬儀、法要、放免祝(刑期を終えて出所した者に対する祝)、組事務所開きなどの総称です。

この「義理かけ」というのは、全国の暴力団に共通する言葉です。その意味するところは、相手に義理をかける、つまり或る暴力団が主宰する前記の諸行事に対して、招きを受けた暴力団では、その行事への参加や、祝儀、不祝儀の出費等義理を尽さねばならず、主宰団体からすれば、相手にそうした負担をかけることから、「義理かけ」と呼んでいるわけです。

これまで説明してきましたように、弱肉強食の社会である暴力団社会では、何時、他組織から侵害を受けるか判らない危険性にさらされているため、各々の組織の親分は、平素から親分同士の人脈づくりや、利害が一致する他団体との連合体を作るなど、組織の存続を図るための努力をしています。
例えば、親分同士が兄弟分の関係を結ぶことになりますと、その集団同士は親戚付き合いという友好関係ができます。もし、万一、その集団同士の末端組員の間で、「間違い」(喧嘩)があっても、親分同士の話し合いで解決することができ、事件を大きくしなくて済むことになります。また、実力のある親分と兄弟分になることができれば、暴力団社会での格があがる効果も期待できます。

このように、暴力団社会では、組織を維持して行くために人脈づくりは欠かせない重要な事柄ですが、一方、この人脈づくりに欠かせないものが、平素の付き合い(交際)であります。平素の付き合いを欠略していては、いざという場合、友諠団体といえども援助してくれません。
そこで、暴力団社会では、暴力団同士の付き合いとしての、この「義理かけ」を非常に大切にするわけです。ところが、この「義理かけ」が、主宰団体の威勢を誇示する場として、戦後次第に派手にしかも大がかりに行われるようになり、さらに「義理かけ」を金儲けの手段とする傾向も強まり、時には億単位の金が動くとも言われるようになりました。
一方、こうした「義理かけ」のため、その会場及び周辺には、羽織、袴や黒服、黒メガネに身を包んだ暴力団員が多数い集し、付近の住民の方々に大変な恐怖感を与える状況も生じてきましたので、警察もこのような「義理かけ」の規制を強化するようになりました。
また、暴力団自身にとっても、「義理かけ」の負担に耐えられなくなってきたことから、昭和50年代半ばごろから、各組織でも「義理かけ」の見直しが始まり、かなり自粛する傾向にあります。
しかし、もともとこの「義理かけ」は、暴力団社会の慣習的行事となっており、「義理かけ」は、今後とも継続していくものと思われます。

なお、こうした「義理かけ」を行う場合は、主宰する暴力団が、「チラシ」と呼ばれる「義理回状」を回布します。またかつては、「義理かけ」が終わった後では、その行事の種類によって、花バクチ、追善バクチ、祝儀バクチなどと呼ばれる賭博を行うのが慣行となっていました。


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