暴力団ミニ講座

14) 身代り
前項までに、暴力団は組織の崩壊を防ぐために、私刑(リンチ)、破門、断指等暴力による恐怖の内部統制を行っていることを説明しましたが、その他にも、暴力団社会では様々な工夫を凝らし組織が潰れないように努力しています。
その1つに、「身代り」制度があります。
この「身代り」とは、それぞれの暴力団にとっては、特に親分を奪われることは、組織の存亡に係る重大事であるところから、対立抗争事件等の事案が発生した場合、捜査機関に親分や有力幹部が検挙拘束されるのを防ぐために、輩下組員が文字どおりその身代わりとなって、捜査機関に当の事件の犯人として自首することをいいます。
昔から、博徒集団などでは「代貸し」という制度をつくり、親分が奪われるのを防ぐ方法をとってきました。
本講座の「暴力団の組織」の項で説明しましたように、以前の博徒集団の組織構成は、貸元(親分)、代貸、本出方、助出方、三下となっており、三下はまたいくつかの階級に分かれていました。すなわち「代貸し」は博徒の階級の1つで、貸元(親分)の補佐役であり、代貸しは賭博を開帳するに当たり、一切の責任者となり、もし間違いがあった場合でも、親分の名前は絶対に出さないという現場におけるヤクザの責任制度〜身代わりの常備機構であったわけです。
ちなみに、関西地方では、代貸しといわずに、「盆守り」ということが多かったようです。
現在の暴力団社会の「身代り」はこうした博徒集団がとってきた「代貸し」制度の観念が受け継がれたものといわれています。そして現在では、単に賭博事件に限らず、対立抗争事件その他事案の種別を問わず、組織防衛のために親分や有力幹部の身代りになるという犠牲的なものに変化してきております。
こうして、身代りになるのは、組織からの要求による場合と、組織のために自発的に身代りになろうとする場合とがありますが、何れの場合においても、たとえ懲役に行ったとしても、服役中や出所後の処遇その他総ての面において、組織として全面的に面倒を見るという前提があって行うわけです。
しかし、捜査機関は、暴力団社会にこうした「身代り」制度が存在していることを常に念頭に置きながら捜査をしておりますので、現実には身代り自首が成功することは皆無といえますが、それでも、身代りは組織防衛のために必要であるところから、彼らはなかなか諦めず、特に対立抗争事件のような組織の存亡をかけた事案のような場合には、こうした工作をするケースが跡を絶たないのが現状のようです。


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