暴力団ミニ講座

12) 断指
断指は、肉体的苦痛を強制する私的制裁、私刑(リンチ)の一つで、刺青(いれずみ)とともに暴力団社会で広く行われている特異な蛮行です。
断指は、文字通り手の指を切断するものであるところから、俗に「指ツメ」(指を詰める、切るの意)とか、「エンコヅメ」(エンコとは暴力団社会で使われている隠語で指のことを意味しています。)などといい、自ら自分の指を刃物で切断し、その切断した指を謝罪または誠実の証として、親分等相手方へ差し出すものです。
そこには、苦痛を我慢するのが「男」だという屈折したヤクザの観念が見てとれます。

もともと、指を切る風習は、我が国では、例えば武家社会などでは誓文に血判をするなど比較的広く行われてきていますが、この暴力団社会の断指は、宝永の頃(江戸時代 1704〜1711年)花柳界において遊女が、男客に対する心中立てのしるしとして指を切り、その血で起請(誓いの文書)したり、あるいは、生爪をはいで客に渡す風習が生まれ、これが当時の下層社会や水商売の間に広がったことに起源があるといわれています。

ところで、この断指には、対外的な不始末をしでかしたが、本人が改悛の情を有するとき、本人に責任をとらせると同時にみせしめのための、いわゆる強制された制裁の意味を持つものと、自発的な誠実の象徴、紛争の調停、組からの脱退といったような場合に行うものとがあります。
すなわち、暴力団の社会では、指を詰めることは真実を尽くすことを意味し、指を詰めてはじめて誠実が実在することを認識するわけです。従って、切断した指は必ず相手に差し出す(見せる。渡す)ことが必要であるとされています。
もっとも、最近の暴力団社会では、「男の観念」も薄れており、価値観も変化してきているので、紛争の調停や誠実の証しのために自発的に断指するような者は大変少なくなっているといわれ、金で解決を図る傾向が強まっているようです。
また、断指は初回は小指を詰めますが、2回以上にわたるときは薬指、中指の順で切断します。その場合、第一関節切断よりも第二関節からの切断、また、第二関節からの切断よりも根元からの切断の方が重いとされています。しかし、例え制裁としての断指であっても、親指と示指は、食事だけは許すという意味で断指をしない決りであるといわれています。

なお、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律では、この断指を「指詰め」と規定し、その意義を「暴力団員がその所属する暴力団の統制に反する行為をしたことに対する謝罪又はその所属する暴力団からの脱退が容認されることの代償として、その他これらに類する趣旨でその手指の全部又は一部を自ら切り落とすことをいう」と定義し、指定暴力団員が、他の指定暴力団員に対し、指詰めをすることを強要しあるいは勧誘し、または指詰めに使用する器具を提供したりする等の一切の行為を禁止する一方、公安委員会はこれ等の行為に対して中止命令を発することができることを定めています。


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