暴力団ミニ講座

6) 総会屋
今、マスコミ等で事件報道に関連して、「総会屋」という言葉が盛んに使用されていますが、そもそもこの総会屋という呼称は、法律用語でも経済用語でもなく、古くから使われているいわゆる通俗語です。

それでは総会屋とは何かということですが、一般的には、その意義を株主総会との関連において理解されており、「株主総会に関連して活動し、企業から不正な利益を得ている者」を指しています。
企業の側においては、これらを「特殊株主」とも呼んでいます。

ちなみに、過去の裁判例の中で総会屋の意義について触れているものを挙げてみますと、「総会屋とは、株主として株主総会に出席資格を有することを利用し、総会の議事進行に関し、会社が金をくれれば会社に協力し、会社が金をくれなければ会社を攻撃するという行動に出ることにより、会社から株主配当金以外の金員を収得している者をいう。」、「総会屋とは、諸会社の若干の株式を所有して、その会社の依頼に応じて、職業的にその会社の株主総会の議事進行係を勤め、車馬債等の名義で金品を受領するものをいうが、そのほか諸会社から金品等何らかの利益を得る目的で株主総会に臨んで株主たる地位を濫用して、会社幹部の営業上の失敗ないし手落ちを攻撃し、はては会社幹部の個人攻撃までして、議場を混乱させて議事の進行を妨害し、自己の存在をその会社に認識させ、威迫を用いてその会社から金品を獲得する類の者、いわゆる『総会荒し』を総会屋という場合がある。」等があります。
諸外国には、こうした総会屋のような存在はないと言われています。

我が国に総会屋が出現したのはいつ頃か、はっきりしたことは判りませんが、明治35、6年の新聞にはすでに総会屋と思われる者の不法な活動状況が報ぜられています。しかし、総会屋が株主総会の運営に関連しつつ、生成発展している経緯から推して、それ以前、すなわち我が国の株式会社の歴史とともに出現してきたものと考えられます。

また、戦前戦中は、当時のいわゆる羽織浪人といわれた多くの右翼団体の政客、壮士が資金獲得の手段として、各種の会社に出入りし、財界から金を引き出していましたが、これら右翼の中からも総会屋と同じような行動に出る者も現れる等、右翼と総会屋が深く結び付いていた時期もあったようです。

戦後、我が国の経済復興とその発展とに伴い、総会屋の活動も次第に活発化してきたわけですが、昭和40年代に入ると、不法資金源の多角化を求めて、暴力団が総会屋稼業に積極的に進出するようになり、総会屋と暴力団との関係が深まりました。こうしたことから、総会屋の世界も暴力団の影響力が極めて顕著になっています。
戦後も昭和50年代初頭には、総会屋の数は5千数百名にも達し、株主総会を形骸化させ、我が国の経済活動に深刻な影響を与えるようになりました。
そのため、昭和56年に「形骸化した株主総会のあり方を是正しその活性化を図るため、企業に寄生する総会屋等を根絶する。」ことを目的として、いわゆる株主総会等の発言や議決権行使等に関し、不正の請託を受けて財産上の利益を収得したり、あるいは反対に利益を供与したりする行為に対する罰則の強化(商法第494条)や株主の権利行使に関し、財産上の利益供与の禁止規定の新設(商法第497条)等商法の一部が改正されました。
それを契機として、企業側の総会屋との関係をたち切る動きも強まり、総会屋の数もひと頃より減少し、現在では、千数百名ともいわれていますが、総会屋と企業との水面下でのゆ着は依然として根強いものがあるようです。

それでは、なぜ総会屋がこのようにのさばるのでしょうか。その大きな要因の一つとして、企業側の「事なかれ主義」という心理的側面があげられています。

戦後、資本と経営が分離し、多くの企業は、いわゆるサラリーマン社長・重役となったわけですが、これらサラリーマン社長・重役はオーナー社長・重役と違い、その地位が不安定であるために、「自分の在任中はと角の問題を起こしたくない」という心理にかられ、諸事にわたり「事なかれ主義」的考え方が強まったと言われています。
こうした考え方の下では、総会屋対策も必然的に事なかれ主義的穏便主義となりがちとなります。
その上企業も人の集まりですから、そこでは派閥も生まれ、首脳人事をめぐる内紛も生じがちです。また、経営上の失敗や経理上の問題あるいは企業幹部のスキャンダル等総会屋に乗ぜられる弱みを、多くの企業が大なり小なり抱えているのが現状であります。
つまるところ、企業の弱みを株主総会や総会屋等が発行する出版物などで公表され、企業や企業経営者の社会的信用の失墜を招くよりも、金銭で事を解決した方が企業経営上のトータル計算においてはプラスになるとの短絡的な考え方が働くことになるわけです。
ましてや、企業幹部が総会屋を株主総会の運営以外の面で積極的に利用しようとする場合もあるとすれば、論外のことであります。

更に、総会屋をのさばらせる2つ目の要因として、株主総会の運営上の問題が指摘されています。
本来、株主総会は企業の経営内容や経営方針を披瀝し、それに対する株主の質問にも堂々と応じて、その理解と協力を得る努力をする場であるはずです。
しかし、我が国の株主総会は、できるだけ短時間のうちに終了させる、いわゆる「シャンシャン総会」が最良とされ、多くの企業がそうした株主総会の仕上げに懸命になっているのが実情です。その理由としては、1つには、株主総会は不特定多数人の会合であるため、本来的に議事運営の難しさがあること。2つには、企業の最高幹部はもともとこのような総会運営に不馴れであること。3つ目には株主総会制度自体が、総会屋等の悪質ないやがらせ等に対し、十分な対抗手段を備えていないこと。4つ目には、我が国においては、株主総会が紛糾すれば、それだけ、その企業自体の信用力や幹部の経営能力を疑問視する傾向が強いこと。5つ目には、企業幹部自身の一種のプライドがネックとしてあること等があげられます。

こうしたことが、総会屋の付け目となり、企業側も勢い総会屋の力を借りて株主総会をスムーズに終わらせようと画策することになるわけです。
その他にも、総会屋をのさばらせる原因には幾つかありますが、ここでは割愛します。

ところで、一口に総会屋といっても、いろいろなタイプがあります。一匹狼も居れば、多数の輩下を抱え会社組織を構えている者も居ます。新聞、雑誌等の出版を看板にしている者、右翼を標榜する者など様ざまです。
こうした総会屋をその活動形態から分類してみますと、次のようになります。

●万歳屋
株主総会に出席して、企業側の発言に対してなんでも「異議なし、賛成」と叫んで会議の進行に協力し、なにがしかの金を貰って歩く連中です。総会の受付等で会社やその会社の幹事総会屋から祝儀を貰えば、そのまま帰る者も多いといわれています。

●分割屋
入手した株を多人数に細分割譲渡し名義の書替を要求する連中です。こうした行為を「株付」といいます。この分割要求は企業にとって最も事務量の多い期末を狙って行うのが多く、企業にとってはこの手口を使われると事務の複雑化に加え、不要な維持費を要することになるので、勢い分割要求をされた株を時価以上で買い取ったり、何がしかの金で解決を図ることになりがちです。
それが彼らの狙い目で、総会屋としては初歩的な手口であるといわれています。

●事件屋
企業の弱点やスキャンダルを探し出して、それをたねに株主総会や出版物等で公表するとして企業側を追求し、その解決金として、企業から不法利益を得ることを目的として活動している連中です。

●総会荒し屋
自分の名前を売り出すために、総会の場で企業側を攻撃し、やり込め、企業側に「手ごわい存在だ」と認識を持たせようとする連中です。
総会屋を稼業として行くために、総会荒しの手口を売出しの手段としているわけです。

●進行屋
企業側の株主となって株主総会に出席し、反対派の発言を封じ、企業側の有利となるよう株主総会をリードし、その報酬として金員を得る連中です。
総会屋としての経験と実力を備え、総会屋としては相当上位にランクされている連中です。株主総会の進行屋としての報酬のほか、慰問料、賛助金名下に月々金品を得ている場合もあるといわれています。

●出版屋
「○○経済研究所」「○○通信社」などの看板を掲げ、新聞、雑誌等を発行して、その購読料、賛助金、広告料等名下に金員を得ている連中です。
総会屋の多くは、こうした新聞、雑誌等を出版しているようです。

●仲裁屋
別名「まとめ屋」といわれ、総会が紛糾した場合に仲に入って妥協案を出し、総会を無事に進行させ、謝礼名目の金品を得る連中です。
攻撃屋と馴れ合いで動く場合もあるといわれています。

●攻撃屋
企業内部の一部の派閥や、株の買占屋等の手先となって総会に乗り込み、企業側を執拗に攻撃追求することによって、依頼者から謝礼を貰う連中です。

●防衛屋
総会で企業側に攻撃をかけてくる連中に対して、企業側からの依頼を受け、総会を守る立場をとる連中で、相当の人数を揃えて総会に出席することもあります。

以上のように、総会屋にもいろいろなタイプがありますが、彼らは常に1つのタイプを堅持しているわけではありません。相手に応じ、時に応じて、総会荒し屋が進行屋になったり、逆に進行屋が総会荒し屋に変身することは日常茶飯事であるといわれています。

総会屋の世界はまさに彼らで言うところの実力の世界ですから、大物総会屋といわれるまでには、生半可な経済評論家以上の理論を持ち、経験を積んでいるといわれています。


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