松江市民レガッタプログラム掲載コラムより

'98-1.「漕艇」から「ボート」へ

 「ソウテイ協会の○○ですが。」「はぁ?、ソ・ウ・テ・イ?」「漕艇=ボートの協会です。」「ボート?、あぁ、レガッタですね。」
 わたしたちが、よく遭遇するやりとりです。「漕艇競技」は「厳しいトレーニングを必要とする地味なスポーツ」というイメージもあり、一般に認知されてされていません。さらに、日本のボートは国際競技レベルも低く、競技の普及も進んでいません。
 幸い、松江では「市民レガッタ」の発展から、ボートを一般の方々に知られているほうです。しかし、華やかなプロスポーツが全盛の時代に完全に取り残されています。
 そこで、日本のボート競技団体を統括する「日本漕艇協会」が98年4月より「日本ボート協会」に名称変更されました。その背景として、
  @オリンピックもプロ選手が参加する時代になった。
  Aボートも世界では、プロ選手、プロコーチが存在し、高度で専門的なトレーニングを積んでおり、スポンサーは不可欠となった。
  Bこのような中で、日本のボートを普及させ、国際大会に勝つことが急務となった。
などの現状があり、大胆な発想による変革として次のようなことが決まりました。
  @馴染みにくい「漕艇」を「ボート」に変更する。
  A判りやすいロゴマークを制定する。‥‥ことになっているがまだ出来ていない。
  Bプロ選手、プロコーチの道をつける。など。
 実は、「漕艇」の英訳は「ローイング=Rowing」なのですが、これまた、知られていない。今まで「ボート」といえば、「モーターボート=競艇」と混同されました。しかし、その競艇組合が97年より名称を「競艇」として「ボート」を使用しないことになり、今がチャンスとなりました。
 さて、100年以上歴史のある「漕艇・端艇」です。名称変更には年配の方々から議論があるだろうと思われました。が、意外にも評判は良く、かえって若い人たちのほうが、思い入れがあって、反対の声がありました。
 松江漕艇協会も島根県漕艇協会も99年度から名称変更をおこなうこととなりました。全国の「漕艇協会」も次々と「ボート協会」に衣替えしています。第16回の市民レガッタは「松江ボート協会」から案内がきます。
 わたしたちも、さらにボートが発展するように、名前だけでなく、中身も変えていきたいと思います。市民レガッタもみんなが楽しめるイベントに育てていきましょう。

(島根県ボート協会 松本健治)




'98-2.ボートのおもしろルール

 ボートのレースは、一般に「日本ボート協会」の「競漕規則」によりおこなわれます。松江市民レガッタも、基本的にはこれに従っていますが、ローカルルールを採用している部分もあります。ボートのレースなんて、スタートして先にゴールしたものが勝ち、というだけのようなかんじがしますが、意外と細かい規則があります。いくつかおもしろいものをご紹介しましょう。

第9条 (前略)漕手・舵手の最も近い所に、予備1個を含め個人用の救命具を常備しなければならない。
 レースの直前に所持しているか、必ずチェックがあって、持っていないクルーは参加できません。けれど、レース中は、万一転覆しても、すぐに救助艇が助けてくれるので、ほとんどこの救命具は活躍しません。過去に他県で練習中に悲惨な事故があり、その対策として盛り込まれました。練習中の事故を防ぐのが目的ですが、常に所持するように定められています。

第10条 (前略)規定の重量に満たない艇は、競漕会に出漕することはできない。
第22条 シェル艇の舵手の体重はユニフォームを含め55s以上とする。
 艇や舵手の最低重量が決められています。どちらも軽いほうが有利なためです。舵手は規定の体重がないと出場できませんので、レース前の計量で水を飲んで体重を増やす光景がよく見られます。艇はレース後に特殊な秤で計測します。ちなみに市民レガッタに使用するナックルフォアはこの規定に該当しません。(もともと艇が重くて、遅いので影響は少ないため)

第27条 クルーは、出漕に際し統一したユニフォームを用い、ふぞろい又は不体裁な服装をしてはならない。
 国体やインターハイでは、レースの前に服装のチェックがあって、パスしないと試合に出られません。帽子やはちまきも全員が同じようにしなければなりません。サングラスも禁止されています。(不良ぽっいから?)ボートは紳士のスポーツということで、国内外とも服装に制約があります。最近ではローイングスーツと呼ばれる専用のカラフルなユニフォームが主流で、試合はとても華やかです。

第56条 (前略)競漕会の期間中、コースに沿いクルーに伴走してはならない。(中略)無線装置や拡声器で岸からクルーに助言や指示をしてはならない。
 ついつい、応援しているクルーを岸から追っかけたくなりますが、禁止されています。なぜなら、そういう人たちは前を見ずに(横を見ながら)走るため、とても危険だからです。無線装置や拡声器は公平さを欠くためです。昔は肉声も禁止でした。違反するとその応援したクルーが失格になったりするので、応援するほうも冷静にならなければいけません。

(島根県ボート協会審判部 松本健治)




'97-1.松江市周辺のボート競技

○周辺の競技団体
 松江市の大橋川、宍道湖で活動しているボート競技の団体は結構あります。社会人のクラブでは松江ローイングクラブと佐陀川漕友会、実業団では樺国電力島根原子力発電所、大学では島根大学、高校では松江北高校と松江東高校、少し離れた佐陀川では松江高専が活動しています。ご存じでしたか?そのほか、市民レガッタに参加されている団体の中には、年間を通じてボートを楽しんでおられるところもあります。(決勝常連のあそこや、会社ぐるみでがんばっておられるとこなど。)

○周辺の市民レガッタ
 周辺の町では、米子や境港、江津でも盛んにボートはおこなわれています。市民レガッタもそれぞれで開催しています。少し遠くを見ても鳥取市や広島市、福山市、岡山市、大阪市、兵庫県にも市民レガッタはあります。全国でもたくさんの市や町で開催していて、代表が集まった交流会も毎年岐阜であります。各地の様子を聞いても、出場クルー数では松江市民レガッタは断然トップを誇り、規模も最大です。そのため、勝つのも難しくなり、ほとんどのチームが予選敗退のくやしい結果になっています。参加して早々と負けてしまったあなたのチームも他の市民レガッタでは意外と勝てるかもしれません。「よーし。それなら。」と思った方はチャレンジしてはどうですか。

○周辺のお話
 話は戻って、本物のボート競技では松江のチームは各種大会で優秀な成績を納めています。インターハイや国体では、何度も上位に入賞したことがあり、全日本選手権でも何回も賞状を頂きました。国体は島根県選手団の期待種目のひとつです。
 ついに96年の秋には、加藤陽子選手(松江ローイングクラブ)が中国上海市でおこなわれたアジア選手権に日本代表として選ばれ、銅メダルを獲得しました。彼女も毎日、この大橋川で世界に向かってトレーニングに励んでいます。
 私達の住むこの松江の川が、最大の市民レガッタをつくり、日本代表を育てているのです。これが私たちの誇りであり、願いです。新聞で松江のチームの活躍を見たり、川で練習しているのを見たら、そんなことをちょっと気にとめてみて下さい。私たちは水に親しむすべての方々を応援しています。

(島根県ボート協会 松本健治)




'97-2.特集アトランタオリンピック

漕艇競技とオリンピック
 97年は4年に1度のオリンピックの年です。ボートもオリンピックの正式種目にあり7月22日〜29日まで米国アトランタで競技をおこなっています。
日本の漕艇競技の歴史も古いですが、オリンピックにも昭和3年第9回アムステルダム大会からずっと参加しています。成績は、残念ながら今まで金メダルはおろか3位までに入賞したこともありません。だいたい20カ国位参加しますが、普通16〜18位が定位置で、テレビ中継はあっても画面に写るところに日本はいません。
もともと、ボートは欧州で人気のスポーツで大変盛んにおこなわれています。日本でも戦前は盛り上がった時期もあるようですが、今はマイナースポーツの代表選手です。外国とは、普及人口が雲泥の差があり、競技力の差も広がる一方です。
 ボートで勝つには、まずからだの大きさで決まります。オリンピックの外国選手は、身長2m体重100 sの選手がザラにいますが、日本はせいぜい 180pの80sが大型選手です。これではまるっきり勝てっこありません。テレビでバレーボールを見ていると、この人達がボートをすれば勝てるのになぁと思ってしまいます。
 ところが、アトランタオリンピックは違いました。このオリンピックから軽量級種目が採用され、選手は70s以下に制限、身体的ハンデがなくなりました。また、史上初の専任プロコーチを雇って(期間限定=全国組織もお金がない。)強化に乗り出しました。1年以上前から長期強化合宿をおこない、今考えられる日本の最強選手でクルーを組みました。そして、みんなでお金をカンパしあって新しい日本独自の艇を開発しました。(これがすごくて、このオリンピックの日本の切り札。世界一の日本造船技術の粋を集め、アメリカズカップ等のノウハウも導入し開発した超秘密兵器。全容は謎のベールにつつまれているが、世界があっと驚く新技術で、とにかくすごいらしい。)
 95年の広島アジア大会では、強敵中国を破って念願の金メダルを獲得。同じ年の世界選手権で日本漕艇史上初めて、決勝戦に進出する快挙を成し遂げ、(この時、関係者は無言でただ、ただ、涙したそうだ。)97年6月のアジア大陸予選を圧倒的強さで突破、勢いづいています。
 水泳、陸上、柔道、サッカー、マラソンと日本期待の種目がたくさんありますが、市民レガッタに参加したあなたはボートにも注目して下さい。日本のボートが初めてメダルを獲得する瞬間が見られるかもしれません。その時は一緒に涙を流しましょう。

後日記
 アトランタオリンピックはみなさんご承知のとおり、残念ながらいつものオリンピックとあんまり変わらない結果となりました。秘密兵器も調整が難しかったり、急遽、禁止されたり、期待のほどの結果は得られませんでした。しかし、この試みは始まったばかりで、ぜひ今後も続けて、日本のボートの発展に役立つことを願っています。
(松江ローイングクラブ 松本健治)