こんな場合、あなたならどうしますか?

少年に対する暴力団への加入勧誘

最近、18歳になる長男の様子がおかしいので問いただしたところ、暴力団員である中学時代の先輩から、その暴力団に加入するようしつこく誘われ困っている事が判明した。


1.暴力団の実態を良く理解させ、暴力団に加入しないという強い意識を持たせると同時に、付き合っている相手と手を切らせる方途を検討する。
暴力団にとって、組員は一番大事な資源であって、組員が減少するということは、その組が衰退するという事を意味し、死活問題につながるところから、暴力団は新しい組員の獲得に血眼になっています。 一見、自由奔放に生きているように見える暴力団員の姿に眩惑されて、一種の憧れに似た気持を抱く青少年もあるようですが、彼らはそれを付け目として、「金銭に不自由はさせない」「お前のことを理解している仲間がたくさんいる」などと甘言を用いて組への加入を執拗に勧誘している状況にあります。
ところで、一旦暴力団に加入しますと、いわゆるヤクザの厳しい掟に縛られて、毎日呻吟しなければならないという羽目に陥ってしまいます。
暴力団に加入しますと、組長並びに組員と親子盃、兄弟盃を交し、擬制の血縁関係を結ぶことになります。組長とは親子の関係、組員とは兄弟の関係となるわけです。こうして一度び血縁関係を結びますと、それを勝手に解消することは許されませんし、組長や兄貴分に対しては絶対服従を強いられます。
暴力団同士の対立抗争事件などが発生すれば、たちどころに命令いっか、生命をかけて相手と戦わねばならない場合もあるわけです。また、実の親子、兄弟といえども無視してかからなければならなくなります。
しかも、平素、組長などから金銭を貰えるどころか、逆に組長に対して一定額の上納金を差し出さなければなりませんので、そうした上納金やいわゆる義理かけ費用、生活費などを得るために、麻薬や覚醒剤の密売や、みかじめ料の徴収など、シノギ(稼ぎ−金を得るための手段)をしなければならなくなってしまい、経済的にもみじめな状態に追い込まれ、とうていまともな生活は期待できません。
設問の場合、こうした暴力団の嘘像や恐ろしさを良く認識させ、暴力団に絶対に加入しないという強い意識を持たせることが、先ず必要なことと思われます。その一方で、付き合いをしている相手方と手を切らせる方途を講ずる必要があります。


2.公安委員会から、加入勧誘に対して、中止命令や再発防止命令を出してもらうように措置する。
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)第16条第1項では、指定暴力団員が、少年(20才未満の者をいう)に対して、指定暴力団等に加入することを強要したり、勧誘してはならないと定め、こうした行為を禁止しています。
成人に対しては、「威迫して」勧誘したり、「むりやり」加入させることが禁止されていますが、少年に対しては、「ただ単に」加入を勧誘することも禁止されています。少年は、暴力団の危険性や自分の将来のことを深く考えずに、安易に暴力団に加入する可能性が大きいからです。
また、暴対法第16条第3項では、指定暴力団員が親族や雇主など関係者に対して、加入の勧誘を止める代わりに金品の支払いを強要することなども禁止し、同法第17条第1項は、指定暴力団員が、子分に対して加入の勧誘を命じたり、子分が加入の勧誘をすることを助長したりすることも禁止しております。更に、同法第17条第2項は、指定暴力団員が、子分でない他の指定暴力団員に対して、加入勧誘行為を依頼したり、そそのかしたり、助けたりすることも禁止しています。
そして、同法第18条第1項では、指定暴力団員から加入勧誘を受けて困っているような場合には、公安委員会が、その暴力団員に対して、勧誘行為を止めるように中止命令を出すことができるように定めており、もちろん、その中止命令に従わなかった場合には処罰することができることとしています。また、同法第18条第2項で、指定暴力団員が、今後同様な加入勧誘を繰り返すおそれがある場合には、公安委員会は、再発防止命令を出すことができることも定めています。
従って、設問の場合、勧誘行為をしている相手方が指定暴力団であれば、暴対法に違反する勧誘行為となりますので、公安委員会から、中止命令や再発防止命令を出してもらうことが肝要です。それが暴力団への加入を止める最も良い方法であると思われます。
また、相手方が指定暴力団であるか否か不明な場合や指定暴力団でない場合であっても、警察官による警察官職務執行法に基づく警告や制止、また身辺の警護などいろいろな手段によって加入を防止することができますので、次項に記載していますように、早めに、関係先に相談することをお勧めします。


3.警察、その他関係機関に相談する。
設問のような場合に、家族の力だけで少年を暴力団員から引き離し、暴力団への加入を止めることは容易ではありません。
従って、相手方暴力団員が指定暴力団員であると否とにかかわらず、速やかに、警察か島根県暴力追放県民センター(暴追センター)、弁護士などに相談し、少年に対する生活指導、身辺警護、相手方に対する対応措置などについて助力を求めることが大切です。
とくに、暴追センターは、暴対法に基づき、各県に設けられている暴力団対策を専門的に行っている機関で、島根県の場合は、県警察本部の中に事務所があります。警察と連携しながら、暴力団に対する各種相談業務はもちろん、少年に対する暴力団の影響を排除する活動なども主要な業務として行っています。


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