暴力団ミニ講座

43) 市民対象暴力
  〜その1類型としての架空請求事案の増加〜
 市民対象暴力とは、民事介入暴力(本講座 22)民事介入暴力 参照)のうち、一般市民を被害者とするもので、暴力団等反社会勢力が暴力を背景として一般市民を対象として不当要求を行うあらゆる事案がこれに含まれます。

 いわゆる、民事介入暴力のうち企業対象暴力、あるいは行政対象暴力(本講座 42)行政対象暴力 参照)等に相応する言葉として使われています。

 こうした市民対象暴力は、その類型としては詐欺型と恐喝型に分けることができますが、従前は、暴力団等反社会勢力が組織的活動として行う、いわゆる「しのぎ」とは離れたところで、それらの構成員である暴力団員等が自身の小遣い稼ぎ等を目的として、単発的に、あるいは偶発的に行うといった傾向が強いものでした。

 ところが、最近は様相が一変し、暴力団等反社会勢力が資金源活動の一環として、組織的に一般市民を対象として不当要求を行う事案が急激に増加してきています。

 その典型的なものが、今マスコミ等を賑わしている「架空請求」事案です。

 なお、遠隔地の息子等になりすまし、自己の窮状を訴えて親、兄弟、親戚等から金銭を振り込ませ詐取する、通称「オレオレ詐欺」は、「架空請求」事案から派生した亜流といえます。

 この「架空請求」による不当要求行為は、個人情報を悪用して、葉書や封書で架空の請求書を無差別に送りつけるもので、曰く「○○総業」「○○債権回収業」あるいは「○○実業」等を名乗り、「指定の電話に至急連絡せよ」とか「指定の口座に至急支払せよ」と金員の支払を要求し、もし支払がない場合は、「ブラックリストに登載する」「弁護士を通じて法的手段をとる」「弊社地方特別回収員が自宅、勤務先、親戚に伺う」等様々な脅迫絡みの文言を書き込んだ「最終督促通知書」「債務存在通知書」等とした葉書や封書を送りつけるものです。

 また、こうした「架空請求」は、債権回収を名目とするもの、インターネットや携帯電話等の有料サイト利用料の請求を名目とするものなどが多いようですが、いずれも巧妙かつ陰湿な騙しの手口を用いており、実際にこの騙しの手口に乗り接触して来た者に対しては、言葉巧みな抱き込みから始まって、最後には電話等による執拗な恫喝、脅迫によって目的を達しようとします。

 このように、「架空請求」事案は、まさしく組織犯罪であり、裏面では「名簿屋」「口座屋」と言われる徒輩と結託し、指示役、電話役、現金引渡し役等に役割分担して犯行を繰り返す組織を持った騙しや脅しのプロの犯罪集団であるわけです。

 しかも、これらの犯罪集団は暴力団が直接係っていたり、暴力団との深い係り合いがある場合がほとんどで、今や暴力団の有力な資金源となっていることが大きな社会問題として指摘されています。

 そこで、こうした被害に合わない要諦は何か。それは、例え「架空請求」が送達されたとしても「相手に反応を示さないこと、即ち無視すること」「相手と接触するような行為をしないこと」です。

 そしてまた、組織犯罪に1人で対抗することは無理なことでもあります。警察や暴力追放県民センターに早期通報、早期相談を心掛けることが肝要です。


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