暴力団ミニ講座

22) 民事介入暴力
民事介入暴力とは何か。民事介入暴力を略して巷間よく「ミンボー(民暴)」と呼ばれています。この言葉は、伊丹十三監督の映画「ミンボーの女」が大ヒットしたことによって、とくに一般によく知られるようになりました。

この、「民事介入暴力」という言葉は、もともとは、昭和54年に警察庁が、「民事介入暴力対策センター」を発足させたのを機会に、暴力団の資金源活動のうち、特定の態様のものを、民事介入暴力という造語で定義づけしたのが始まりで、今では一般にも定着しました。

警察庁の定義づけでは、民事介入暴力とは、「暴力団又はその周辺にある者が、企業の倒産整理、交通事故の示談、債権取立、地上げ等民事取引を仮装しつつ、一般市民の日常生活や経済取引に介入し、暴力団の威力を利用して、不当な利益を得るものをいう。」としています。

この定義に従えば、「民事介入暴力」というのは、その行為主体が「暴力又はその周辺にある者」であって、そうした者がいわゆる一般の民事取引や民事事件に介入し、かつ、暴力団の威力を背景として、暴力又は暴力的威嚇によって、不正不当な利益を貪る行為を行うことを指しているわけです。

この定義の中で、行為主体とされている者のうち、「暴力団の周辺にある者」としては、暴力団のいわゆる準構成員とか、えせ右翼政治団体、えせ同和団体、フロント企業等の構成員等が含まれるものと思います。

ちなみに、日本弁護士連合会では、昭和55年に、前記の警察庁の「民事介入暴力対策センター」に対応して、「民事介入暴力対策委員会」を設けましたが、その際、民事介入暴力を、「民事執行事件、倒産事件、債権取立事件その他の民事紛争事件において、当事者又は当事者代理人若しくは利害関係人が、他の事件関係人に対して行使する暴行脅迫の行為を示唆する一切の言動並に、社会通念上、権利行使又は実現の限度を超える一切の不相当な行為」と定義しています。

この定義では、行為主体を「暴力団又はその周辺にある者」に限定していない点が警察庁のものと相違しています。

ところで、このような民事介入暴力は、暴力団の有力な資金源活動のひとつとして、捜査機関による検挙を免れながら、社会、経済の変化に対応し、手口的にも知能化、巧妙化、広域化の傾向を強めながら、その領域を拡大してきているのが現状です。

こうした民事介入暴力の過去からの動向についてみますと、暴力団がその資金源活動として、市民や企業の経済活動に目を付け、次第にこれを狙い打ちするようになったのは、昭和40年代以降のことで、日本経済の発展と伴っているともいえます。

彼らは、「民事不介入の原則(単なる民事上の法律関係をめぐる争の解決は、対等であるべき私人当事者間の解決によるべきであって、警察権の介入は許されないとする原則)」を盾にとって、一般の経済活動の中に広くその魔手を伸ばしてきました。

なかでも、昭和61年度末から始まったバブル経済期を通じ、地上げ行為、総会屋活動など、暴力団の威力をフルに発揮して巨額の不法収益を蓄積し、その資金力を背景に今や、裏の経済社会から表の経済社会への進出度合いを一層深めています。

こうした中、平成4年3月に民事介入暴力の取締法規として、「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」(略称 暴対法)が施行され、指定暴力団員による、刑法などこれまでの取締法規に触れるかどうかスレスレの民事介入暴力、すなわち「グレーゾーンの行為」が規制の対象となることになりました。

そのため、暴力団は暴対法の適用を免れるために、いわゆるフロント企業(別項で説明)を設立し、それを隠れ蓑として、不況に苦しむ企業等に巧みに食い込み、企業の乗っ取りを図ったり、倒産整理、債権取立、競売に絡む執行妨害などの不法資金獲得活動を活発に行っており、こうした形態の民事介入暴力は、年々増加の一途をたどっているのが現状です。

以上述べた通り、民事介入暴力は一般の経済活動にとって大きな脅威となっていますが、こうした民事介入暴力につけ込まれないためには、企業自体が経営姿勢を正しくして、企業倫理を踏みはずさないように、常に自らを律するとともに、不審と思われる相手方と不用意に取引関係を結ばないことが、基本的に最も大事なことと考えられます。

また、不幸にして民事介入暴力に巻き込まれたときには、安易に妥協したり、カネで解決を図ったりすることのないよう、毅然とした対応に心掛け、早めに警察、弁護士等に相談することが肝要なことと存じます。


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