2019年7月27日(土)  

プラバホール芸術監督による音楽コラム ぷれこんさあと【8-9月号】


   【ぷれこんさあと10-11月号】
   【ぷれこんさあと10-11月号】
           【野津雄太】
           【野津雄太】
野津雄太 凱旋公演


 30年前辺りから、欧米では若年層のクラシック音楽離れが顕著になってきた。その危機を回避するべく、プロの音楽家が学校などに出かけ、音楽を体験的に伝える「アウトリーチ」と呼ばれる活動を始めていた。従来のわが国で行われていた「音楽鑑賞教室」と呼ばれる、生徒が講堂や体育館に集められ、音楽を解説付きで「お勉強」するものではない。少人数でのワークショップである。音楽の「本質」を衝き、多大な成果を上げているというのだ。東京フィルハーモニー交響楽団に勤務していた私は、ロンドン交響楽団のヴァイオリン奏者が実践するその「アウトリーチ」の講習に何度も出かけ、そのノウハウを学んだ。

 縁あって2003年、プラバホールに勤務させていただいたので、まだお馴染みではない語句だった「アウトリーチ」を「音楽の出前」と分かりやすくし、早速情宣活動に入った。有り難いことに翌年からたくさんのオファーを頂いた。地元で活躍する音楽家、ヴァイオリンの辺見康孝君やファゴットの木村恵理さん、トランペットの山﨑啓史君などに、ノウハウを伝え、試行錯誤しつつ実践していった。演奏家としてかつて経験したことのないような、受講者の描いた絵を見て即興演奏するなど、数々の無茶振りにもよく耐えてやっていただき、ここで改めて感謝だ。

 2007年から参加してくれたのが、フルートの野津雄太君。小学校で木管楽器について学ぶ4年生の子供たちを対象にしたものはもちろん、公民館などでの大人版にもたくさん参加していただいた。バッハ、モーツァルト、ビゼー、エルガーの定番曲や、我国で夙(つと)に有名なドップラーの「ハンガリー田園幻想曲」、さらに宮城道雄の「春の海」、サン=サーンスやプロコフィエフの「鳥」を描く曲など多彩に演奏していただき大好評だった。特に今日の金属製のフルートを開発した、テオバルト・ベームが、それの宣伝用に作曲した、超絶技巧曲は、インパクト充分であった。

フルートは金属製のものが多いのに、なぜ木管楽器に分類されるのかとか、特に本当は大変説明が難しい、フルートは何故音が出るのかなどの奏法や構造の話は、目の前で実演が体験できるので実にわかりやすい。曲や作曲家にまつわる歴史的背景なども伝えさせていただいている。

彼が「出前」に出演されてから、12年経つ。彼の吹くフルートを聴いた方は勿論、まだ聴いたことがない方も、松江市が生んだ秀でた才能を聴きに、是非9月29日の彼のリサイタルに来ていただきたい。素晴らしく成長した彼の凱旋公演、是非皆さんと共に寿ぎたい。
 

                        プラバホール 芸術監督 長岡 愼



第34回 松江プラバ音楽祭 9/29公演「野津雄太フルート・リサイタル」
バックナンバー(ぷれこんさあと)
ぷれこんさあと8-9月号(PDF) (pdf 219KB)